BIM実装ロードマップ
4.マネジメントレベルのBIM推進

4.5 ナレッジベースと改善サイクルの運用

これからはじめるCDE&Forma
共通データ環境活用術

  • 共通データ環境(CDE)とは
  • BIMの情報共有をもっと楽にするポイント
  • Formaでのファイルとプロセスの共有方法

BIM推進は、導入時の研修や初期設定で完了するものではありません。プロジェクトで起きた権限競合、誤削除、2D補完、集計不整合、復旧対応を記録し、次の案件のテンプレート、モデリングルール、チェックリスト、教育資料へ反映することで定着します。

本節では、BIM運用を属人的な努力で終わらせず、全社的なナレッジベースと改善サイクルに接続する方法を整理します。

4.5-1
問題ログをナレッジとして蓄積する

起きた問題を、次の案件の判断材料にする

BIM運用で発生した問題は、その場で解決して終わらせず、ログとして残します。
権限競合が多い箇所、誤削除が起きたビュー、2D補完が増えた図面、数量を拾えなかった要素、パブリッシュやロールバックを使った復旧事例などを記録します。

問題を蓄積することで、個人の経験ではなく、組織として改善すべきポイントを把握できます。

BIM問題ログの例

発生日対象問題種別原因暫定対応標準反映先
○月×日断面ビュー誤削除断面線と詳細線の混同パブリッシュから復旧操作教育、
ビュー保護
×月△日建具表集計不整合属性未入力パラメータ修正入力チェックリスト
△月○日ワークシェアリング権限競合担当範囲
不明確
権限解放作業分担
ルール

4.5-2
標準・テンプレート・教育へ反映する

記録した問題を、再発防止の仕組みに変える

問題ログは、記録するだけでは効果がありません。原因を整理し、テンプレート、モデリングルール、チェックリスト、教育資料へ反映します。

たとえば、集計できなかった要素があれば属性入力ルールを見直し、誤削除が起きた場合はビュー保護や操作教育へ反映します。ナレッジベースは、現場の失敗を次のプロジェクトの標準に変える仕組みです。

ポイント

標準は一度作って固定するものではありません。プロジェクトで得た知見を反映しながら更新します。

問題ログを反映先へ展開する

4.5-3
KPIで定着状況を見える化する

BIM運用の状態を、感覚ではなく数値で確認する

BIM推進の定着状況は、感覚だけでは判断しにくいものです。集計表の空欄率、2D補完件数、権限競合件数、誤削除件数、復旧にかかった時間、同じ指摘の再発率などをKPIとして設定します。

KPIは担当者を責めるためではなく、標準や教育が機能しているかを確認するために使います。数値化することで、改善すべき領域を客観的に把握できます。

BIM定着KPIの例

指標見る目的取得方法改善アクション
集計表の空欄率属性入力の定着集計表の確認入力ルール・
教育見直し
2D補完件数モデル化不足の把握承認ログモデル化基準の見直し
権限競合件数作業分担の妥当性作業ログ担当範囲再設定
誤削除件数操作事故の把握問題ログビュー保護・教育
再発率改善効果の確認指摘ログ標準・
チェックリスト更新

4.5-4
BIM推進を全社改善サイクルへ接続する

プロジェクトの学びを、全社の標準へ展開する

BIM推進を定着させるには、各プロジェクトの知見を全社へ戻す場が必要です。BIM推進会議やレビュー会で、問題ログ、KPI、テンプレート更新、教育課題を確認し、次のアクションを決めます。

経営層は、BIMを作業効率だけで評価するのではなく、数量把握、変更管理、コスト判断、再発防止の仕組みとして評価します。これにより、BIM運用は属人的な努力から組織的な改善活動へ移行します。

全社改善サイクルの4フェーズ

下段カードは、上段サイクルを運用するための4フェーズです

4.5-5
この節の要点

ここまでのまとめ

  • BIM運用で起きた問題は、ログとして残し、組織のナレッジにします
  • 問題ログは、テンプレート、モデリングルール、チェックリスト、教育資料へ反映します
  • KPIを設定し、BIM定着状況を感覚ではなく数値で確認します
  • プロジェクトの学びを全社へ戻し、BIM推進を継続的な改善サイクルとして運用します

これからはじめるCDE&Forma
共通データ環境活用術

  • 共通データ環境(CDE)とは
  • BIMの情報共有をもっと楽にするポイント
  • Formaでのファイルとプロセスの共有方法
落井 純一(おちい じゅんいち)
j.studio 代表
建築設計事務所「j.studio」代表。2011年よりBIMを設計業務に導入し、現在では業務の約95%をAutodesk Revitで完結させている。設計初期から詳細データを構築するフロントローディングにより、手戻りのない正確かつ合理的な設計を追求。小規模事務所ながら質の高い設計と年間十数棟の生産性を両立し、実務に即したBIM活用法の知見を通じて建築業界のDX推進に貢献している。