BIM実装ロードマップ
4.マネジメントレベルのBIM推進

4.3 プロジェクトチェック体制と変更管理

これからはじめるCDE&Forma
共通データ環境活用術

  • 共通データ環境(CDE)とは
  • BIMの情報共有をもっと楽にするポイント
  • Formaでのファイルとプロセスの共有方法

BIMはCADより変更に追随しやすい一方で、変更への対策が不要になるわけではありません。上流作業の変更は後続のBIMモデル、ビュー、集計、シートに影響します。また、ワークシェアリングでは権限競合や誤削除が発生する可能性があります。

本節では、作業依存関係を可視化し、チェックゲート、権限管理、パブリッシュ、復旧手順を含めたプロジェクトチェック体制を整理します。

4.3-1
作業依存関係を可視化する

並列作業の範囲と、順番が必要な範囲の整理

BIMプロジェクトでは、すべての作業を同時に進められるわけではありません。外部仕上表、通り芯・レベル、材料表など、初期から並列化しやすい作業があります。

一方、内部仕上表を作るには部屋配置が必要で、部屋配置には間仕切壁が必要になるように、上流作業が完了しないと進められない作業もあります。作業依存関係を図にして、担当者が同じ前提で動けるようにします。

作業依存関係フローチャート

凡例: 青=並列化しやすい/緑=上流依存あり/桃=モデル非依存

モデリングの依存関係

シートの構成と出図の考え方

4.3-2
チェックゲートを設計する

作業完了の判断を、BIMモデル・属性・集計で確認

チェック体制は、完成図面の検図だけでなく、BIMモデル、属性、集計、シートの連動を確認する仕組みにします。基本モデル(通り芯・レベル・床・壁天井)、部屋、内部仕上、建具など、モデリングの要所でチェックゲートを設けモデルの内容を確認します。

各ゲートでは、配置の正しさ、属性の入力、数量の確認、ビュー・シートへの展開を確認し、次工程に進める状態かを判断します。

チェックゲートの設計

ゲート確認対象合格条件次工程への影響
通り芯・レベル完了通り芯・レベル位置・名称・
高さが確定
壁・床・外壁の作成
主要壁完了外壁・間仕切壁カテゴリ・
タイプが正しい
部屋配置・面積表
部屋配置完了部屋・部屋名部屋境界が閉じている面積表・仕上表
建具入力完了ドア・窓寸法・仕様が入力済み建具表・開口確認

4.3-3
権限競合と誤削除を予防する

権限競合と誤削除への対策が不可欠

ワークシェアリングでは、誰かが先にBIMモデルを触ると、その要素に権限が発生します。モデラーが多すぎると、権限競合が増え、作業待ちや同期の負担が大きくなります。

また、プロジェクト後期には、範囲選択によるBIMモデルやビューの誤削除が大きな影響を及ぼします。BIMマネージャーは、モデラーを最小限にし、担当範囲を明確にし、重要なビューや要素の保護を徹底します。

注意

断面線やビューを誤って削除すると、シート上の表示だけでなくビュー自体が失われます。

権限競合の予防フロー

削除事故が起きやすい場面

4.3-4
パブリッシュと復旧手順を運用に組み込む

復旧できる状態を、通常運用の中で作る

誤削除や大きな変更ミスに備えるには、定期的なパブリッシュと復旧手順が必要です。要所でパブリッシュしておくと、その時点のBIMモデルを参照・ダウンロードでき、復旧の手掛かりになります。

ロールバックは同期の度に生成されるため、強力ですが、プロジェクトがどの状態にあったのかが把握しづらく、影響の程度を確認する必要があります。通常運用では、こまめなパブリッシュ、変更前後の確認、復旧判断の手順を明確にします。

ポイント

パブリッシュ済みデータから、ビューやモデルを移植することで復旧コストを削減します。

予防・検知・復旧を支える管理領域

リスク予防策検知方法復旧方法
誤削除ピン固定・作業前確認チェックゲートパブリッシュ参照
権限競合作業範囲の分担リクエスト確認同期・権限解放
大きな変更影響範囲の確認変更前後比較ビュー移植/
ロールバック
リスク別対応を、通常運用の4領域へ展開する

4.3-5
この節の要点

ここまでのまとめ

  • BIMでも変更管理は必要です。上流作業の変更は後続作業に影響します
  • 作業依存関係を可視化し、並列化できる範囲と順番が必要な範囲を分けます
  • チェックゲートでは、BIMモデル、属性、集計、シートの連動を確認します
  • 権限競合と誤削除を予防し、パブリッシュと復旧手順を通常運用に組み込みます

これからはじめるCDE&Forma
共通データ環境活用術

  • 共通データ環境(CDE)とは
  • BIMの情報共有をもっと楽にするポイント
  • Formaでのファイルとプロセスの共有方法
落井 純一(おちい じゅんいち)
j.studio 代表
建築設計事務所「j.studio」代表。2011年よりBIMを設計業務に導入し、現在では業務の約95%をAutodesk Revitで完結させている。設計初期から詳細データを構築するフロントローディングにより、手戻りのない正確かつ合理的な設計を追求。小規模事務所ながら質の高い設計と年間十数棟の生産性を両立し、実務に即したBIM活用法の知見を通じて建築業界のDX推進に貢献している。