0.1-1日本のBIMの出発点
BIMは10年以上の長期テーマ
BIMは10年以上前から日本でも取り組まれてきました。3Dで建物が立ち上がるビジュアライゼーションのインパクトが非常に強く、干渉チェックのように図面だけではわからない問題を事前に潰せる、フロントローディングという考え方に初めて現実味を与えた技術でもあります。テクノロジーの最先端として、多くの技術者やベンダーが競うように開発を進め、BIMに可能性を見出した人も多くいました。

しかし、当時のBIMは、使いこなすために非常に高いITリテラシーが必要で、現場を支えてきた熟練技術者ほど、PC操作やデジタル環境に馴染みにく、『BIMができる人・できない人』という分断が生まれました。本来は仕事を楽にするはずのツールが、入力の手間ばかり増え、現場に少なからぬ混乱を招いたことで、日本のBIM活用は一つの大きな踊り場を迎えたともいえます。
0.1-2今、訪れているBIMの転換点
世代交代により、3Dは「特別な技術」から「当たり前の道具」へ
踊り場を迎えたBIMの普及をもう一段階進めるのが、世代交代です。デジタルネイティブ世代にとって、3D環境は日常であり、特別な技術ではなく当たり前の道具になりつつあります。
2Dだけで仕事を進めることは、若手にとって大きなストレスになり、極論を言えば、スマホを取り上げて黒電話で仕事をするように言うのと同じ構図です。世代交代はBIM普及の最大の転換点であり、現時点で取り組む意義となります。

3Dネイティブ世代(3D前提の思考)
- 直感的に空間を把握できる
- 情報はデータとして共有したい
- 反復作業は自動化したい
0.1-3技術継承の基盤として世代交代を支えるBIM
「ベテランの知見」 × 「若手のデジタルスキル」
日本が誇ってきた技術力、生産力、現場の知見をモデルや属性、テンプレート、パラメータといった形でBIMに蓄積し、継承する情報基盤となります。BIMの弱点であった入力の手間もツールの自動化やAIといった技術により軽減が期待できます。
これまで受け継がれてきた匠の技や知見を、BIMという新しいテクノロジーに乗せて、進化させながら継承していく。そのための新しい建築プロセスを、あらためて模索し直すフェーズが今です。

0.1-4BIMがもたらす変化
情報の民主化:「暗号」から「体験」へ
2D図面は読み解く技能を前提とするため、専門家以外の方には完成イメージや空間の関係がつかみにくいという側面があります。その結果、説明の前提条件が揃わず、合意形成に時間を要してしまうケースも散見されました。
BIMであれば空間を直感的に共有しやすいため、発注者や関係者の皆様が同じイメージを持った状態で議論を行い、迅速に意思決定を進めることが可能です。

・読み方を知る人に理解度が依存する
・誤解が後工程で顕在化する可能性が高い
・「言った/言わない」が起きやすい

・空間を見ながら合意形成ができる
・論点を早い時点で見つけやすい
・意思決定の質を上げることが可能
0.1-5建設業界の変化
共通基盤としてのBIM
資材価格の上昇や人材不足により、業界の再編も進んでいます。売り手市場となった建設業界では、『お金を出せば仕事をしてくれる』時代は終わり、ゼネコンは人材確保のためにM&Aでサブコンを確保している状況です。発注者の役割も発注だけでなく、プロジェクトのリスクや制約を理解し、主体的に管理していく形に変化しています。
それに伴い、設計事務所やゼネコンの役割も、“作る人”から“プロセスを設計・統合する人”へと変わってきています。BIMは、これらの変化により発生する膨大な情報を整理する共通基盤として、関係者感の意思疎通のための共通言語となります。

0.1-6BIM実装ロードマップの役割
前述の通り、建設業界の世代交代と市場の変化により、BIMのニーズは高まっています。
しかし、国土交通省の調査(令和7年1月)によれば、大手ゼネコンのような企業規模が大きいほど導入率が高い傾向にある一方、従業員数100人以下の中小企業の普及率は44.8%に留まっており、中小企業への普及促進が大きな課題となっています。
BIM実装ロードマップは、BIMの導入や定着に課題を抱えている企業に向けて、実務の定着を促す体系化した実践ガイドとして、スモールスタートから段階的に運用を拡大する「失敗しない手順」を解説しています。標準化のノウハウや動画を用いた実務マニュアルにより、学習コストの壁を乗り越え、BIMによる手戻りのない設計プロセスと業務効率化の実現を目指します。

出典:国土交通省『建築分野におけるBIMの活用・普及状況の実態調査』
(令和7年1月)※加重平均(1〜100人/101人以上)




