小規模設計事務所が7年で100棟以上を設計、BIMの効率化を極めるj.studio

Autodesk RevitとBooT.oneでBIM導入を成功させるポイント

事務所、店舗、倉庫、工場、保育園、老人ホーム、ホテルと言った非住宅系の建物の設計を得意とし、兵庫県に拠点を構える設計事務所「j.studio」。少数の精鋭体制でありながら、2018年の開業以来、100棟を超える設計を手がけ、大手設計事務所やゼネコンのBIM化を支援するバックオフィス業務もこなすなど、建築業界で独自の存在感を放っています。

その驚異的な生産性の裏側には、一貫して「BIM」と「Autodesk Revit」を軸に据えた設計スタイルがあります。今回は、代表の落井 純一氏に、BIMへの先進的な取り組みと、それを支えるAutodesk Revitの設計業務を効率化するアドインツール「BooT.one」の活用術、そして目指すBIMの未来について伺いました。

少数精鋭でBIMに挑む、前例なき挑戦

j.studioには2つの事業の柱があります。一つは、ゼネコンや設計事務所からBIMデータ作成を受託する業務です。ただデータを作成するだけでなく、顧客担当者と二人三脚で作業を進め、BIMの運用ノウハウを共有しながら、BIMへの理解とスキル向上をサポートしています。もう一つは、施主から直接依頼を受ける設計業務です。

「私は2010年からAutodesk Revitでの設計を始め、2018年のj.studio開業後も100棟以上のBIMプロジェクトに関わってきました。いまはCADをほとんど使っていません。私たちの最大の強みは、長年のBIM運用で培ったノウハウと、徹底したAutodesk RevitとBooT.oneの活用による圧倒的な作業効率です。納品物もすべてBIMデータでお渡ししています。」 と落井氏は語ります。

落井氏がAutodesk Revitの力を実感したのは建物の外観や内装等のパースや動画を、プレゼン用のデータではなく設計中のBIMモデルから生成することができ、より短時間で意思決定できる点です。進行中の医療モールのプロジェクトでは、看板位置や大きさ、内装を周辺環境の3Dモデルと合わせて、どう見えるかをシミュレーションしました。

医療モールプロジェクトでのシミュレーション

「2Dの図面では、この検討に膨大な工数がかかっていたはずです。しかしAutodesk RevitのBIMモデルを利用し、どのように看板がみえるかを動画で見せることで、施主や関係者との打ち合わせ工数が劇的に減り、短期間で合意形成を図ることができました。これこそ2DではできないBIMの真価だと感じました。」

Autodesk Revitで設計作業を⅓に削減、さらなる効率化を目指して

落井氏はBooT.oneの導入以前からAutodesk Revitを活用していました。しかし、初期の頃はファミリが少なく、タグもわからず、全て自力で作成し、苦労することも多かったと言います。その甲斐もあり、CADと比較してAutodesk Revitの利用で作業時間を⅓に削減できることがわかりました。

「Autodesk Revitでは、BIMモデルを設計図書化する作業は大変ですが、一度作ってしまえば、修正作業はCADと比較して劇的に楽になります。BIMモデルを変更すれば、それが100枚、200枚とある図面にすべて反映されるからです。仕様の変更に強く、一貫性が保たれるところはBIMモデルの大きなメリットです。

CADは規模の小さいプロジェクトでは工数を抑えられますが、規模が大きくなれば際限なく作業量が増えていきます。その点、BIMはある程度の規模を超えてくると効率が大きく改善します。」

j.studioブログ「BIM導入の経緯3」より抜粋

Autodesk Revitの活用で大幅な作業効率化を実現しましたが、落井氏はそれだけでは満足せず、BIMを極めるため、さらなる効率化を探求していました。

3日かかっていた作業が3時間に
「BooT.oneがないと仕事にならない」と語る、驚異の生産性向上

効率化を追求していた落井氏がBooT.oneの導入を決めた最大の理由は、集計機能の優位性でした。手作業での面積計算や建具の数量集計は、ヒューマンエラーが起こりやすく、複数人でチェックしていても図面と数量が合わないという課題がありました。BooT.oneは、この集計作業をAutodesk Revit上で正確かつ簡単に行うことができます。

設計で多い繰り返し作業をワンクリックでできるように効率化されているのがBooT.oneの特長です。豊富な機能をもつBooT.oneですが、オススメ機能の1つは『根拠式』です。

BooT.oneを利用する前は、部屋の輪郭をかいて、寸法をとって、転記して、エクセルで集計・編集したものをさらにはりつける作業が必要でした。ただ、100、200も部屋があると転記ミスが起こるため、作業そのものだけでなく確認と修正に膨大な工数を取られていました。さらに寸法に変更が入ると作業がすべてやり直しになるので、気が遠くなりますね。

そんな3、4日かかっていた作業がBooT.oneによって3時間に短縮されました。発注元が確認時に『すごい精度であってますね』と感心していましたが、私はボタンをクリックしただけで、あとはBooT.oneが自動抽出してくれたんです。

設計の本質的な作業ではない、単純作業に時間を取られることがなくなったのは作業効率だけでなく、気持ちもとても楽になりました。

その他にも、BooT.oneは以下のような機能でj.studioの生産性向上に貢献しています。

ドアローダー・窓ローダー・シャッターローダー

ひとつずつ手作業で制作していた建具が、簡単に生成できるようになりました。連窓などの複雑な形状も生成できます。

ファミリカタログ

エクスプローラーでファミリを探す手間がなくなりました。エクスプローラー上ではファイルを開くまで探していたファミリなのかわからなかったので苦労しましたが、ファミリカタログで必要なファミリをすぐに見つけられるようになりました。 BooT.oneで公開されているファミリと自作したローカルファミリが一覧となる点も非常に便利です

展開図作成

Autodesk Revitで展開図を作成するには、立面ビューを部屋に配置して、一つ一つトリミングして貼り付ける作業がありました。部屋が多いと数日かかっていた作業ですが、BooT.oneでは展開作成コマンドで10〜15分で展開図が自動作成されるため、コーヒーを飲みながら待てる時間に変わりました。

表挿入

Autodesk Revitではエクセルの表が取り込めず、表を取込には一旦AutoCADにエクセルを読み込んで図面化し、更にその図面をAutodesk Revitに配置するという煩雑な作業が必要でしたが、表挿入コマンドではワンクリックでエクセルの表を挿入できます。

シート関連ツール シートリナンバー

図面が途中で増えても、自動でリナンバーできるので便利です。

テンプレート更新

BooT.oneテンプレートが更新された差分だけをインポートできるため、バージョンアップ時の作業が格段に楽になりました。

BooT.oneがないと仕事にならない」と落井氏が断言するほど、その効果は大きいのです。特に、Autodesk Revitを導入したばかりの企業にとって、BooT.oneは初期設定や実務で使うコマンドを補ってくれるため、Autodesk Revit自体の説明をする手間が減るというメリットもあります。

BooT.oneはツールではなく「BIM環境」

j.studioでは、BooT.oneを単なるアドインツールとしてではなく、「BIM環境」そのものとして捉えています。

「あまりにも便利なので、基本作業はBooT.oneのコマンドを利用し、微修正だけAutodesk Revit の標準コマンドを使うようになりました。BooT.oneは、パラメーターの持ち方やデータの構成思想がしっかりしています。将来的なバージョンアップへ追随するため、当社では、BooT.oneのコア部分をいじらず、そこに独自仕様を追加していくという運用をしています。」

「Autodesk Revit単体で導入してはいけない」
BIM活用の成功に必要な3つのポイント

これからBIM導入を検討する企業に向けて、導入を成功させるポイントを伺いました。

1.BooT.oneを導入する

「Autodesk Revit単体でBIMを始めるのはやめましょう。

BooT.oneは、テンプレート、ファミリ、そして実務で使うコマンドが揃っており、本来必要なAutodesk Revitの初期設定を不要にしてくれます。

BIMを知らない人にとって、この初期設定のハードルは高く、挫折する原因になりがちです。日本仕様の設計に必要な機能がパッケージ化されているBooT.oneを最初から使うことを強くおすすめします。」と、改めてBooT.one導入の必要性を強調しました。

2.BooT.oneの標準テンプレート「BooT.one Standards」を活用する

BIMが普及しないもう一つの大きな理由として、BIMモデルから設計図書をいかに仕立てればよいか、そのチュートリアルがないことです。

BooT.oneのテンプレート『BooT.one Standards』をまず使いましょう。作業者がバラバラにデータを作るのではなく、指針となるテンプレートを活用することで、共通言語としてAutodesk Revit、ひいてはBIMを使えるようになります。」

3.2D図面からの意識改革

最後に、BIM活用の成功には「意識改革」が不可欠だと語ります。

BIMで表現できないことは無理にやらないことが大切です。BIMでつくるのは3Dモデルであり、そこから出力されるのは、図面ではなく3Dモデルを平面でキャプチャした『写真』です。2D図面の名残でBIMモデルに不要な情報を表現しようとすると、かえって効率化できません。特に最終チェックを行うマネジメント層が意識を変えないと、BIMを導入しても、運用できないまま終わってしまうケースが多いです。」

BIMが拓く、新たなビジネスと未来

BIMの導入には、ライセンス費用や学習コストへの不安がつきものです。しかし、落井氏は、BIMによる効率化は人件費を大幅に圧縮できると力説します。

Autodesk Revitを1本導入することは、人を3人雇うのと同じくらいの生産性向上をもたらします。特に、ある程度の規模がある案件ではBIMは大きな効果を発揮します。だからこそ、小規模な設計事務所ほどでBIMに投資をしたほうがいいです。

一部の大手企業だけがBIMを使う状態だと建築業界全体としての恩恵が少なくなってしまいます。

2、3名規模の事務所でもBIMを運用すれば、これだけ作業効率にインパクトがあるということを示したい。私たちは新しい技術を追いかけ、普及を促進することで建築業界のレベルを上げていく手助けをしたいです。そのために、BooT.oneとAutodesk Revitをより多くの会社が使ってくれるようになればいいと思っています。」

BooT.oneによって設計業務を大幅に効率化できた落井氏は、その時間を活用し、新たな挑戦を始めました。セルフリノベーションで事務所を作り、かねてからの趣味だったコーヒーの焙煎を事業化。今では自家焙煎スペシャリティコーヒー専門店「東山珈琲」を開き、Web販売を手掛けるまでになりました。

j.studioの挑戦は、建築業界全体のDX推進における貴重なヒントになると考えます。小規模事務所でもBIMを徹底活用すれば、生産性向上だけでなく、新たな価値やビジネスを創造できることを証明しています。

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