BIM組織 再考
- 2025.06.19
BIMマネージャとBIMコンサルタント
前回のブログでBIMマネージャの役割を、社内のBIMの標準化と仕組みを整備するポジションと書きました。
これは事実そうであると思っていますが、これを実践するためにはどうすればいいのでしょうか。
BIMマネージャが考えること
BIMマネージャの役割は多岐にわたりますが、何から手を付けたら?と迷ったら、まずBIM標準をつくることを実践すると整理しやすいかと思います。
BIM標準:
この言葉を簡単に使ってはいけないと思うのですが、ここでの考え方として下記の用途と定義しておきます。
- BIMデータの保存形式は?
- 自社内での保存場所は?
- CDE(共有データ環境)の有無
- フォルダ構成(ディレクトリ構造)は?
- 2次元ファイル命名規則は?
- 図面名称の付け方(付番ルール)は?
- 進捗とLODの関係は?
- データ統合のタイミングとその目標日
- 干渉チェックの方法は?
これらを決めることを 「BIM標準」を作る とします。
基本的には会社全体のルールであり、どんなプロジェクトにも適応可能な内容です。
またプロジェクトによっては、協力会社とのコラボレーションが必要になりますので、CDEの環境があることが理想です。その際にさらに決めておくことに
- 使用するCDE環境は?
- CDE環境の管理はだれ?
- CDE環境を使ったことのない協力会社へのトレーニングはいつだれが?
- プロジェクト全体で基本とするファイルフォーマットは?
- 中間ファイルフォーマットの仕様は?
- 干渉チェックのタイミングとそれぞれが提供すべきファイルフォーマットは?
- その時のLODは?
- etc
Revit標準:
弊社はRevitを中心にビジネスを行っている関係で、Revit標準としましたが、それぞれお使いのツールの標準と読み替えてください
- ワークセットの区分け
- 中央ファイルとローカルファイルの統合ルール
- ワークセットでの命名規則
- ファミリの保存と利用方法(会社共通利用)
- ファミリの保存と利用方法(プロジェクト固有)
- ファミリの命名規則
- プロジェクトブラウザの表示設定ルール
- ビューの命名規則
- ビューテンプレートの設定と一覧
- 線種・線の太さ・線種パターン・塗りつぶしパターン
- 寸法スタイル・テキストスタイル
- 各種パラメータの設定(プロジェクト・グローバル・共有・ファミリ)
- オブジェクトスタイル
- 図面構成(タイトルブロック)
- etc
Revit標準の多くはテンプレートにセットされているものになりますが、それぞれの会社ごとに図面表現などに違いがあると思いますので、その違いに合わせて独自テンプレートを作ることにもなります。
ただ、今後図面ではなくデータで建物を造ることができるようになると、図面表記部分のこだわりは必要なくなり、誰もが同じテンプレートを使うことでデータの流動性、可用性が高まるのもBIMのメリットです。工業化による製造支援は今後の労働者不足にとって一つの選択肢であることは間違いないと思いますので、BIMのデータの在り方が問われることになると想像します。
この辺りまでは、BIMマネージャがルール化することだと思います。
プロジェクト標準:
建築のプロジェクトはその用途などを含め非上位に多くのバリエーションが出てきます。BIM標準やRevit標準として基本ルールができていても、プロジェクトによってはそれらの標準に収まらない事案も出てくるでしょう。
各プロジェクトにおいて、基本となる標準ではうまく運用できないような内容を拾い出して、プロジェクト標準としてまとめる必要が出てきます。
これは、EIRに左右されることもあると思われます。 幸いにも日本発注者で詳細なEIRを提示してくるところは稀だと思いますが、海外オーナーの場合は現在でも起こる話です。どんな情報を属性情報として残すべきであるといったような仕様は想定されますので、プロジェクトごとに柔軟に対応しなくてはなりませんし、それらをルール化し文章化しておかないと、最後に「しまった!」ということにもなりかねません。
プロジェクト固有の仕様に関してはBIMマネージャとともにBIM統括コーディネータが調整することになると思います。なぜならBIM統括コーディネータが最終コンテンツの納品に責任を持つ立場であるため、自らEIRとBEPの内容には熟知している必要があるからです。
BIMコンサルタント
BIMマネージャの職務は会社の標準を作り込むまでが非常に大変です。作っても終わりではありませんが、ベースが無いと始まりません。そんな時に頼りにしたいのが「BIMコンサルタント」です。
欧米でのBIMコンサルタントは、渡り鳥のようなイメージがあります。内容が内容なだけにA社で3年、B社で3年と言ったように、その会社に常駐して(社員の場合も派遣の場合もあるようですが)BIMの立ち上げから運用までを見届けて次の会社でまた同じことを繰り返すような人なので、渡り鳥のようなイメージです。ただ、同じところに繰り返し現れるわけではありませんから、イメージとして ですが。
日本ではまだ職業としてこれをやりきる人はいないのでは?と思いますが、やはり知識を持った人の力を借りて自社の標準を作って運用にまでもっていくことが近道だと思いますので、まだこれから標準を考えようとされている会社の方は、BIMコンサルタントを探すことからはじめるのもいいと思います。