BIM組織(BIM Organization)
- 2025.06.13
BIMを業務に適応させる際に必要と言われている組織体系について考えてみましょう
BIM組織はすでにさまざまな団体等で議論されて文書化されていると思いますが、解釈には幅がありますし、会社の業務責任体制に合わせた柔軟な運用が必要です。杓子定規な位置づけを覚えるのではなく、まず担うべき業務の種類を考えるきかっけとして見てみましょう。
下記チャートは一つの例です。あくまでも「BIM**」だけを抽出していますので、実際の組織には従来のプロジェクトマネージャや設計者等が存在します。「BIM**」は、そのような従来の組織体系の方が兼務する場合もあれば、新たな職種として組織さる場合もあります。さらには、「BIM**」の方は専門的にプロジェクトを兼任することもあるでしょう。それぞれが理想的にどのような役割分担をするのがいいかを理解できていれば、柔軟な組織作りは可能です。また同様に施工者側にもBIM関連の担当者が必要になります。

BIMマネージャ
発注サイドにおけるBIMマネージャ
BIMのメリットは、プロジェクトの様々なフェーズで情報を有効活用することにあります。意思決定支援、各種計画検討の最適化、進捗管理、ステークホルダーからのプロジェクトの見える化など、様々な方法で実現できます。
本来発注者はBIMの適用に何を期待するかを明確にしておく必要があります。しかし、BIMの目標を定義することは、多くの依存関係や多様な視点といった複雑な要素が絡み合うため、容易ではありません。目標を正確に記載し、要求したり達成状況を確認したりすることはさらに困難です。そのため、BIM統括マネージャという特定の役割を定めることが求められます。
発注サイドのBIMマネージャは、プロジェクトマネージャーの従来の業務にはなかった、BIM目標の策定、プロジェクト固有のEIR(発注者情報要件)の作成、設計者や施工者への伝達を担当します。
上記はBIM組織の一般的な定義として記載しましたが、国によって発注者と設計者もしくは施工者の契約関係が異なります。発注サイドのBIMマネージャの業務が日本の一般的な建設プロジェクトでも成立しているのかというと、ほとんど成立しないと思われます。理想と現実のギャップは地域特性を考慮して柔軟に改善すればいいのですが、この項目に限ると民間の発注者側にBIM統括マネージャを置くという発想自体がは難しいかもしれません。
設計サイドにおけるBIMマネージャ
設計サイドのBIMマネージャは、プロジェクトマネージャーと共に、EIRに対するBIM目標の策定、BEP(BIM実行計画)の策定を行います。プロジェクトにおける協働の境界条件も設定します。プロジェクトの進行中、BIMマネージャはBIMの進捗管理行います。責任範囲の一部は、第三者に外注される場合があり、具体的なプロジェクト設計に応じて異なります。
また、社内プロジェクトにおけるBIM戦略の責任者として、すべての成果を共通のBEPに統合する責任を負います。プロセス、モデル制作レベル、使用ソフトウェア(CDEを含む)、データ交換フォーマットなど、使用するBIMの手法を定義し、文書化します。BIMマネージャーは、BIM戦略がこれらのガイドラインに従って導入されるようにする責任も負います。
BIM品質マネージャ
このポジションに言及する資料は多くありませんが、BIM品質マネージャという役割を外注化するような考え方もあるようです。通常、BIMの品質に責任を持つのはBIMマネージャとBIMコーディネータであると考えますが、これもどのレベルの品質保証をするかによってはマネージャやコーディネータには重い負担となることがあります。
BIMはデジタル情報であり、EIRやBEPを通してそのジオメトリ(形状情報)が持つべき属性情報が明確に定義されている場合、その情報の確認を行う必要が出てきます。BIMプロセスの理想で考えるとジオメトリと属性情報の情報の整合性確保は行われるべきあるとも言えるでしょう。その部分を担うのがBIM品質マネージャという役割です。ただ、目視での管理はほぼ不可能ですので、専用のBIM品質管理ツールや自動チェックメカニズムなどを使用することになります。
BIM統括コーディネータ
BIM統括コーディネーターは、最終コンテンツ、特にBIMモデルの納品に責任を負います。このポジションにおいて、BIMマネージャーと専門分野設計レベルのBIMコーディネーター間の連携役を務めます。BIM統括コーディネーターは、決められたツールとプロトコルを運用レベルで適用します。最も重要な責任は、専門分野設計者のサブモデルで構成される全体モデルの統合にあります。これには、とりわけ、ジオメトリ(衝突/接続チェックなど)と情報(一貫性のある属性名や重複のない情報など)の両面における、各職種間の調整が含まれます。これには、合意された計画サイクルに従ったCDE(共通データ環境)の技術的実現と適用も含まれます。
BIMコーディネータ(専門分野)
専門分野のBIMコーディネーターは、BIM統括コーディネーターと同様の業務を担いますが、その業務範囲はそれぞれの専門分野に限定されることになります。要件と品質が納品仕様に合致していることを確認することを求められ、プロジェクトから生じる要件と会社または部門の内部規則との不整合に対する調整役にもなります。
BIMモデラ―
BIMモデラーは具体的なモデルを作成し、その形状と情報内容の両方に責任を負います。モデラーは、他部門のモデルとの整合性も含まれますが、モデルを他部門に渡す前に、BIMコーディネーターによる承認を必要とします。BIMコーディネーターは、モデルから生成される図面や部品リストなどのドキュメントの作成にも責任を負います。
役割が多くてわかりづらいですが、社内のBIMの標準化と仕組みを整備するのが、「BIMマネージャー」、仕組みや仕様・プロトコルに則りプロジェクトを進めるのがコーディネーター、そしてプロジェクトのモデルを作るのがモデラ―といったところでしょうか。
ただ、BIMマネージャが作る仕組みや仕様はモデラーの使う部品一つ一つにまで落とし込まれていると考えると、BIMマネージャは非常に大変な役割です。