10D BIM
- 2025.06.05
最近、不思議と「10D BIM」という単語を見かけることが多くなってきましたので、少しその内容をまとめておきたいと思います。
10D BIM
- 3D BIM: 幾何学的情報(形状、サイズ)
- 4D BIM: スケジュール(工程)情報
- 5D BIM: コスト情報
- 6D BIM: サステナビリティ情報
- 7D BIM: ライフサイクル情報(運用・維持管理)
- 8D BIM: 安全
- 9D BIM: リーンコンストラクション
- 10D BIM: 建設の工業化
3Dから7Dまでは、BIMに携わる方にはおなじみの表現ですね。(6Dと7Dの順番が異なる記載も多くありますが、ここでは6Dをサステナビリティ情報として紹介しておきます)
一方で8Dから10Dに関しては諸説あるようですが、おおむね固まってきている感じです。
BIMのディメンジョンとは?
3Dから先のディメンジョン(次元)は、しっくりこないところがありますが、3Dをベースにしてどの情報を付加もしくは連携させるかをディメンジョンで表しているのであると考えれば、少し理解しやすいのではないでしょうか。
例えば、3D BIMの幾何学的情報(形状、サイズ)に時間(工程など)情報を加えたものを 4D BIM、同じく3D BIMにコスト情報を加えたものが5D BIM。
従って、必ずしも3Dの次に4D、4Dの次に5Dということではなく、一足飛びに3Dから5Dという情報の持たせ方もあると解釈できます。
コスト分析に時間軸があることで、工事の進捗に合わせた出来高を知ることができるという意味では、低次元からすべての情報が追加されていくことにも違和感はありませんが、設計段階で総建物コストを知りたい場合は4Dが飛ばされても問題ないとの考えです。
「BIMはコンセプトである」という大前提において、BIMを説明する際にいくつかのカテゴリをディメンジョンという枠に収めて、説明しやすくしているものとしてとらえてみましょう。
3D BIM: 幾何学的情報(形状、サイズ)
BIMにとっては基本的なディメンションであり、建物を視覚的にとらえることができます。
BIMツールはこの3Dモデル情報から長さ・面積・体積などの情報の取得や、形状を構成するオブジェクトの数量を集計したりすることができます。
4D BIM: スケジュール(工程)情報
3D BIMモデルにスケジュール(工程)情報を追加し、建設工程の計画および管理に役立てることができます。
施工計画(工程)と3Dモデルを紐づけることで、建物の着工から竣工までの時間軸に対する出来形を確認することができるため、初期段階では近隣説明への資料として、また施工時には日々入れ替わる協力会社の方々にその日その後の現場の状況などを知ってもらうような使い方ができます。ツーとしては工程管理ツールと4DBIMツールをつなげるような使い方が多いのかと思います。
- 工程管理ツール:オラクルの Primavera、マイクロソフトのProject、EXCEL、その他
- 4D BIMツール:Autodesk Navisworks等
5D BIM: コスト情報
コスト情報を付加することで、建物コストの積算をある一定の精度で行うことができます。
BIMにおけるコスト情報の与え方はいろいろ悩ましい部分があります。部位別の集計を行いたいのか部材別の集計を行いたいのか(実際は両方)、単価は材工か材かなどなど。 考え方としては3D BIMが持つ長さ、面積、体積、部材数量といった情報を別途DBとして書き出して加工するような形が多いのかと思います。
BIMモデルにコスト情報を持たせたい場合は、例えばRevitの場合ですと部材となるファミリにあらかじめコスト情報を埋め込む方法があります。埋め込む際に材料のコストか工賃のコストかその両方かなど部材種別によって変える必要はあるのかと思いますが、情報があればある一定のレベルでコスト算出を行うことは可能です。
積算情報は最終的に日本の見積もり様式に合わせることを好むと思いますので、ツールは日本産のものが好まれたり、各社独自開発されていることが多いのではないかと思いますが、下記参考までに
6D BIM: サステナビリティ情報
サステナビリティ(持続可能性)をサステナブル建築 という言葉と合わせて考えると、プロジェクトの設計フェーズで考慮したい内容になりますので、維持管理よりも前のフェーズの6Dとして取り上げます。
この前のブログで言及しましたように、2050年カーボンニュートラルの実現に向けた取り組みがいろいろと動いていますが、実はBIMが台頭してきた初期において、将来像として認識されていたのもこの分野です。
2007年に、オートデスクがProject Chicago(Green research)として公開したコンセプトビデオにそのあたりが表現されています。当時アメリカでは建物にLEEDへの対応が求められており、LEEDの指標に対応するために、建物の形状とその周りある給水塔や樹木との関係を比較してどちらの建物形状が日照レベルで基準を満たすかをリアルタイムに算定しながら設計することを紹介しています。同様に採光と熱量負荷の関係から最適な庇の配置を検討するようなことも映像化されています。あくまでもコンセプトビデオでしたが、当時を知る人はBIMが単純に3次元形状モデルではないことを感覚的に理解できたビデオだったと思います。


3次元モデルに、断熱性能、遮音性能などの部材性能が保持されていると、その情報を使って設計時にリアルタイム環境シミュレーションが行え、さらには建物運用時と設計時のエネルギー試算の乖離を理解して次の建物に反映させるなど、環境配慮に強い設計者を多く輩出できるなどの期待が広がります。
コンセプトビデオから20年弱を経過した現在もそのコンセンプトが実現できているわけではないのですが、2050年と言う一つの区切りに向けてこの分野はこれから伸びるべき分野かと思います
- まちスぺ―ス Plateauデータを活用した応用技術の環境シミュレーションサービス
- Autodesk Forma

7D BIM: ライフサイクル情報(運用・維持管理)
運用や維持管理に関わる情報との連携。建物のライフサイクル全体にわたる運用管理をカバーすることになります。
部品、仕様、メンテナンスマニュアル、保証に関するデータとの連携を目指すことになります。
ファシリティマネジメント(FM)の世界でBIMはまだその基盤とはなっていないと思われます。施工から維持管理までを一気通貫でサポートする一部の企業では、すでに存在するBIMデータのFM活用を積極的に推進している事例もありますが、管理がまだ図面と仕様書などのドキュメントベースの場合はあまりBIMへの注目度は高くなさそうです。 この辺りも、建築確認のBIM図面審査の流れによってBIMデータが一般化されてくると、関連アプリケーションがいろいろ出てくると期待したいと思います。
維持管理に関わる情報の多くは施工時に付加されるものと想定されます。使用材料や機器類の想定耐用年数、定期点検を必要とする部材の種類とその位置、それらの長期修繕計画への展開など、基本情報が部材単位で記録されていれば、維持管理での活用が可能になります。
人手不足、働き方改革等がこれからますます実感される社会において、建物の維持管理におけるDX化の機運も高まることと思います。その時BIMのデータに上記情報があることはDX化への一歩になるでしょう。
問題は、竣工図レベルの施工情報をだれがBIMデータに付加するかですね。
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